相談内容
施設の入所をきっかけに不動産の売却や管理を家族に任せておきたい。
- 高齢のお母さん(87歳)は自宅不動産に独りで住んでいますが、最近、身体的に不安を抱え、この際老人ホームへの入所を考えています。
- お母さんは、自分の判断能力が低下した場合であっても、自分が死亡するまでの間、子に経済的支援を求めることなく、自己の財産の範囲内で安定した生活を送りたいと思っており、財産の管理・運用・処分を、長年、近くにいて世話をしてきてくれた長男(64歳)夫婦に任せて施設入所費用や生活費に充てて欲しいというのがお母さんの願いです。
- 尚、お母さんが死亡した場合に残った財産を、長男又は孫に渡すことを次男も了承しています。
<Aさんの財産状況>
自宅不動産
賃貸アパート(全4戸)
預金等+ 年金収入
■家族信託以外の方法を利用した対策
母が認知症で判断能力を喪失すると、自宅を売ることも活用することも困難になります。
例えば成年後見制度を利用した場合。後見人に全ての権限が。
自宅を売って施設入所や介護費用を捻出したい場合にも、厳格な家庭裁判所の許可が必要。
又、成年後見の申し立てから成年後見人が選任されるまで最低でも一ヶ月かかるとともに、必ず長男が選任されるとは限りません。
成年後見人に専門家がつくと・・継続的な報酬が発生。
親族の場合、報酬は不要でも、毎年、裁判所に報告書の提出義務があり煩雑。
■家族信託を利用した提案
- Aさんがお元気な間にAさんを委託者兼受益者、長男Bさんを受託者、長男の妻を予備受託者とした信託契約を締結します。
- 信託財産は、自宅不動産・賃貸アパート・預金等とします。
- Aさんの財産をBさんに管理・運用・処分できるという権限を付与することによって、Aさんの判断能力が低下した場合でも、Bさんが必要に応じて信託財産を活用してAさんの入所費用や生活費等に充てることができ、「子に経済的支援を求めることなく、自己の財産の範囲内で安定した生活を送りたい」という母Aさんの意思が継続されることになります。
- 又、信託終了時における残余財産の帰属先を決めておくことによって、遺言の代用的役割も果たせます。本件例でいくと、Aさんが亡くなった時、残余財産は長男B(先に長男死亡の場合、長男の子D)に渡すようにしておきます。