活用事例

家族信託を検討する

不動産共有リスクの回避

  不動産を共有していると、大規模修繕や建替えや売却をしたりするときには共有者全員の承諾が必要となり、
 したいときにできない、売りたいときに売れないなど、機会の逸失が発生します。

   <事例>

  • 例えば、A、B、Cの三人兄弟で賃貸不動産を共有していて、身体的不安のある長兄Aに判断能力がなくなれば財産
    管理に支障をきたすことになりますし、相続が発生すればその相続人によって更に共有者が増えることになり、中
    には遠隔地居住者や疎遠者かつ連絡不能など、いざという時に共有者の同意が得づらく、より一層思うに任せなく
    なります。
    何もしなかったら・・ある日全ての財産が凍結状態に!
    これを防ぐためには、関係者が健常時のうちに対策を講じておくことが大切です。

    <解決策>
  • AとBとCが事前に委託者兼受益者となり、信頼できるBの子Xを受託者としてそれぞれの持分を信託財産とする信
    託契約を締結し、登記簿上の所有者となって管理処分を一任されたXができる信託目的(修繕や適切な時期におい
    ての建て替え、売却等)を定めておけば、万一Aが認知症になって判断能力を喪失した場合も、受託者であるXが単
    独で法律行為をすることができます。
  • 賃料は一旦受託者の口座に振り込まれ、その後支払うべき諸経費があれば差し引いて、持分割合に応じた金額が各
    受益者に支払われることになります。もちろん専門の管理会社に委託することもできます。
  • 口座管理(受益者の個人口座とは分別)される賃料収入は、受益者のものなので受託者が勝手に使うことはできませ
    ん。尚、固定資産税も登記簿上の所有者である受託者に納付義務が生じるるので、信託財産口座から支払うことに
    なります。
  • 売却についても、本人に※監護(生活、施設入所等、支援)の必要性が出たときには、受託者であるXの裁量によ
    り不動産を処分して活用することもできますし、継続して賃貸不動産を所有する場合、Aの死亡後の受益者を指定
    しておけば、引続きXが単独で法律行為ができるとともに、不動産の持分としてではなく受益権として権利が移行
    するので、賃貸収入はこれまでとおりに財産の凍結を避けて得ることができます。また、状況によっては換価処分
    して持分に応じた金銭で分配して清算結了させるようにしておくことも可能です。⇒ 柔軟な財産管理。

※ 監護には、身上監護(医療同意権等)と財産管理の部分があります。

 

<家族信託のメリット>

関係者が元気なうちに、現在から将来に向けてのスムーズな家産承継(管理し活用し遺す)を契約の中で決めておく
ことができます。

関係者の想いと共通意識をもって組成される、委託者(財産を託す人)と受託者(財産を託される人)と受益者(利益を
受け守られる人)が定められた契約は、その目的に明瞭な開示性と、活用に柔軟性をもった制度とも言えるでしょう。

名義集約機能

認知症対策&実家売却

 スキーム 
両親を介護施設に移すために 自宅不動産を売却して施設の入居費用を賄いたい

高齢者支援のための財産管理と処分権委託

 相談内容 福岡県内N様の家族信託コーディネート

子のいない高齢者支援のための財産管理と処分権委託

・老人ホームに入所中の90歳後半になられるSさんは、生涯独身だったためお子さんはおられません。

財産は、少々の預貯金と、自宅不動産。入所後のS様の世話と、空き家となった自宅の管理は、Sさんの妹さんであるAさんがされています。
といってもこの方も既に80代のご高齢。
・Aさんからご相談は、「世話をしてきた自分も高齢であること。私の自宅から施設及び姉の自宅まで遠く、維持管理も大変であること」
「金銭財産も少なく、不要不動産を売却して少しでも姉の生活支援や介護費用として充てたい」との内容でした。

・既に築後20年を超え、評価額もそれほど高くない不動産ですが、注文建築で建てられた家はまだまだ十分利用できます。建物価値もある今ならまだ相応の価格で売却も可能。土地は代々相続により受けたもので取得費は不明につき、売却した場合、譲渡所得税がしっかりかかります。が、空き家となって一年足らずであることから、*-1転居してから3年後の12月31日までに譲渡できれば3,000万円の特別控除も受けられます。
Sさんは身体的な衰えはともかく、まだお元気で判断能力もありますが、ご年齢からすると、売主となっての任意売却には懸念があります。妹であるAさんとも話し、家族信託のご提案をいたしました。
・契約をするにあたって、ご本人にお会いするため幾度か施設を訪問。信託の制度、目的等をイラストを使って解りやすくご説明しながら、
*-2 Sさんの信託契約における認識と理解度の判断をさせていただきました。

 その後、司法書士と契約内容について摺合せ。最終的に、Sさんには施設にて契約書に委託者としてご署名・押印をいただきました。

-1 信託財産に入れたとしても、税の特例は受けられます。

-2 信託契約を交わすにあたり、委託者の要介護度は直接に関係しません。信託の目的と内容に対する認識と理解ができるかどうか。

 

■スキーム

■目的 空き家処分とS様の生活支援

■委託者Sさん⇔*受託者Aさん(Sさんの妹)⇒受益者Sさん
 *Aさんも高齢ですが、これまで最も身近に世話をされてこられてSさんの信頼も厚い。

■第二次受託者Bさん(Sさんが可愛がっておられる姪)

信託監督人Cさん(受託者Aさんのお子さん)

 *当初、Aさんは第二次受託者にCさんを推薦されていましたが、Cさんは遠い県外におられるという
ことでしたから、Aさんの意向もくみ、監督人という役割を担っていただくことにしました。

 

*信託契約終了事由・・

(1)受託者および委託者の合意

(2)信託法第163条1号~8号の信託の終了事由が生じたとき

(3)信託財産がなくなったとき

(4)委託者であるSさんが死亡したとき

*残余財産の帰属権利者も定め・・ 

事業承継~株式信託の概要

■事業承継における課題・・企業オーナーの悩みは尽きない・・
後継者に「経営権(=議決権)」を「いつ」承継させるのか?

・非後継者に「株式の財産権」を「どのくらい(割合)」承継させるのか?

・株主に相続発生⇒株式は法定相続人の準共有になります。
 ⇒準共有状態では、持分価格の過半数をもって権利行使者を定める。
   (持分価格の過半数に満たないと権利行使者が決められずデッドロックに)

・何も対策をしないままオーナーが亡くなると、法定相続人全員による遺産分割協議が必要となる。(時間がかかる)

<家族信託を使う大きな判断基準>・・

・認知症になった際の、運営や財産管理の面の対策が必要か?
・何代にも渡って資産承継を指定する必要があるか?
・自社株の議決権行使で不都合が生じるか?

■信託以外の選択-1<成年後見制度>
・成年後見制度は身上監護と財産管理(財産の減少防止・現状維持
・経営者や大株主が認知症になると、経営は忽ちデッドロック(行き詰まり)
・成年後見開始の審判を受けた場合、取締役の資格を喪失
・成年後見開始の審判が下りるまで時間がかかる
・成年後見人は、議決権行使を含む、全ての法律行為に関する権限を行使
・法律専門家(弁護士・税理士等)が就任した場合、財産を護ることが職務であり、基本、経営に関与はしない。また、就任中は継続的な
 報酬が必要になる。

・親族が就任した場合、報酬は不要(請求は可能)だが、毎年、家庭裁判所への報告書の提出義務がある。また、後見申し立て時、家族を後見人
 候補者に指名しても、実際に選任されるとは限らない。
・成年後見人の財産保護の為に、成年後見人から、遺産分割協議の際に、法定相続分、遺留分を侵害されている場合は、遺留分を主張される。

 

■信託以外の選択-2<株の贈与・売買>
・贈与税がかかる
・贈与により、現経営者の保有株式数が、議決権の過半数(例:発行株式数100株中51株以上)を下回った場合、経営権を掌握出来なくなる。
・贈与後も、しばらく経営権を握っておきたいとの希望があっても、叶えることができない。
・指図権がなく、お試しで贈与することが難しい。
・贈与後、後継者が先に亡くなった場合、後継者の相続人に株式が相続されてしまう。
・後継者である子への贈与後、後継者に子(卑属)がいない場合、再び親(尊属)に財産が戻り(二重課税)、せっかくの贈与が無駄になって
 しまう。
・売買には後継者の資金調達が必要。
・売買すると親(売主)には譲渡税がかかる。

■信託以外の選択-3<遺言>
・遺言者の死亡によって効力が発生。
・認知症による意思能力の低下や喪失~死亡までの間の対応ができない。
・遺言執行が必要な為、経営にタイムラグが発生。
・後継者候補に株式を相続させる旨の遺言を作成した場合でも、遺留分問題や遺言書の書換え等により、現経営者の死後、想い通りに株式を後継
   者に集中させることができるか疑問や不安が残る。
・後継者に自社株を集中して承継する場合、株価が高いままだと相続性の負担が大きい。

・現経営者の相続財産に占める自社株比率が高い場合、後継者以外の遺留分への対策や配慮が必要となる。

 

★例えば家族信託(民事信託)を活用すると・・
・課税時期を決められます
 ⇒遺言代用信託(死んだ時に贈与)
 ⇒停止条件付き遺言代用信託(孫が成人になったら◯◯を渡す・・)
・受益者は税務を考えた上で設定
・事業承継の確実性
・経営の空白が生じない・・後継者の地位の安定、議決権の分散化の防止
・経営者が認知症になっても、受託者である後継者が議決権を行使できます
 (経営者が元気なうちは指図権者として、議決権行使に指図を出すことも可)
・財産管理の安定性(受託者として法人(一般社団法人など))
・自社株を引き継いで経営できます
・遺留分対策を考慮しながら、生前に本人の意志で財産を振り分けしておける⇒生前贈与による相続税対策。積極的な資金運用。
・承継者に孫が適任者とすれば、孫の成長を観ながら信託契約に諸々規定することによって引き継ぐことも可能となります
・相続の際に遺言執行や遺産分割協議書等が一切不要で、即時に二次受益者に受益権が移動します

 

 

障がい者等支援信託

 相談内容 
親亡き後の障がいをもつ子の生活が心配

  • Aさん(67歳)と妻Bさん(65歳)には、自立生活が困難な重度の知的障害をもつ長女Cさん(38歳)がいます。
  • Cさんの世話を長年してきたAさん夫婦ですが、最近富に身体的衰えを自覚するAさんは、自分が認知症になった場合における妻の苦労と、いずれ夫婦共に亡くなった後のCさんの生活の面倒を誰が看てやるのかが不安です。
  • 別居する姉思いで独身の長男Dさん(35歳)は、Cさんの面倒は自分が看続けるから心配は要らないとは言ってくれていますが、金銭面を含め過度の負担をかけたくありません。

 

人物関係図

<Aさん夫婦の財産状況>
自宅不動産
預貯金等4000万円
年金収入月額20万(夫婦合わせて)

 

■家族信託以外の方法を利用した対策

  • 贈与
    ⇒長女に判断能力がないので贈与契約不可。
  • 遺言で財産を長女に遺す。
    ⇒遺言は遺言者が死亡するまで効力が生じないので有効対策とはならないし、贈与同様、たとえ渡ったとしても長女に管理能力がない。
  • 親が判断能力を喪失した場合、本人の意思確認ができないと、定期預金の解約も不動産の売却もできなくなる。
  • 成年後見制度を利用した場合、財産が家庭裁判所の監督下に置かれるので、柔軟な資産管理や相続対策ができない。
    また、身内でもない後見人が、Cさんの身上監護及び財産管理についてどれだけ的確にしてくれるかわからない。

 

■家族信託を利用した提案

  • AさんおよびBさんを委託者兼当初受益者、長男Dさんを受託者、CさんとDさんを二次受益者、Cさんを三次受益者とした信託契約を締結します。
  • 尚、将来において、受益者代理人選任の必要性が出る場合を想定して、母Bさんの姉妹の甥を受益者代理人予定者としておきます。
  • A、Bの家族とBの姉妹家族との仲は以前より円満であり、障害者であるCへの理解も十分にあります。

家族信託を利用した提案

福祉型(認知症対策)財産管理信託

 相談内容 
施設の入所をきっかけに不動産の売却や管理を家族に任せておきたい。

  • 高齢のお母さん(87歳)は自宅不動産に独りで住んでいますが、最近、身体的に不安を抱え、この際老人ホームへの入所を考えています。
  • お母さんは、自分の判断能力が低下した場合であっても、自分が死亡するまでの間、子に経済的支援を求めることなく、自己の財産の範囲内で安定した生活を送りたいと思っており、財産の管理・運用・処分を、長年、近くにいて世話をしてきてくれた長男(64歳)夫婦に任せて施設入所費用や生活費に充てて欲しいというのがお母さんの願いです。
  • 尚、お母さんが死亡した場合に残った財産を、長男又は孫に渡すことを次男も了承しています。

人物関係図

 

<Aさんの財産状況>
自宅不動産
賃貸アパート(全4戸)
預金等+ 年金収入

 

■家族信託以外の方法を利用した対策

母が認知症で判断能力を喪失すると、自宅を売ることも活用することも困難になります。
例えば成年後見制度を利用した場合。後見人に全ての権限が。
自宅を売って施設入所や介護費用を捻出したい場合にも、厳格な家庭裁判所の許可が必要。
又、成年後見の申し立てから成年後見人が選任されるまで最低でも一ヶ月かかるとともに、必ず長男が選任されるとは限りません。
成年後見人に専門家がつくと・・継続的な報酬が発生。
親族の場合、報酬は不要でも、毎年、裁判所に報告書の提出義務があり煩雑。

 

■家族信託を利用した提案

  • Aさんがお元気な間にAさんを委託者兼受益者、長男Bさんを受託者、長男の妻を予備受託者とした信託契約を締結します。
  • 信託財産は、自宅不動産・賃貸アパート・預金等とします。
  • Aさんの財産をBさんに管理・運用・処分できるという権限を付与することによって、Aさんの判断能力が低下した場合でも、Bさんが必要に応じて信託財産を活用してAさんの入所費用や生活費等に充てることができ、「子に経済的支援を求めることなく、自己の財産の範囲内で安定した生活を送りたい」という母Aさんの意思が継続されることになります。
  • 又、信託終了時における残余財産の帰属先を決めておくことによって、遺言の代用的役割も果たせます。本件例でいくと、Aさんが亡くなった時、残余財産は長男B(先に長男死亡の場合、長男の子D)に渡すようにしておきます。

家族信託を利用した提案